コロナのみなし陽性という言葉をお聞きになった方っておられると思います。ご家族がコロナと診断されて、自分が同居していて、有症状の濃厚接触者になった場合に、
あることを条件に、医師の判断でPCR検査を行わなくても臨床症状をもって
コロナと診断できるという臨時的な措置です。
こういう例があります。
有症状の濃厚接触者になったのに、どこのクリニックもコロナと診断してくれない!という患者さんから「コロナの診断をしてほしい!」とオンラインで依頼がある場合。
これは簡単に「みなし陽性」にはできません。なぜなら、上記のあることを条件の内容が、「PCRや抗原検査が不足していて、検査の実施に支障が生じている場合に限る」からです。発熱外来では、PCRや抗原検査がすべてなくなるということは極めてまれですので、「みなし陽性」を診断できる状況が感染のピーク時で検査キットが不足しやすい時期を除けば、ほぼありえないということなんですね。また、抗原キットやPCRキットも個人で取り寄せることができます。それくらい便利な世の中です。
こんな人もいます。「PCRは近医でやって陰性でした。自分は有症状で濃厚接触者、家からは隔離されていて出られません。でも家族は残り全員コロナです。限りなく、自分はコロナ感染に罹っていると思うのですが、コロナと診断していただけますでしょうか?」という問い合わせ。
確かに限りなく疑わしい例だとは思います。診断は不可能ではありませんが、コロナの診断には原則PCRや抗原が陽性であることが必要になります。もちろん、PCR陰性であってもコロナを否定できるものではありませんが、PCR陰性であることが、コロナであると肯定できるものでもありません。したがって、PCRが陰性であって、コロナをそれでも疑うのならば、陽性になるまで、コロナの抗原あるいはPCR検査をするというのが原則になります。その場合、どこまで公費が適用されるかは医療機関側の問題にはなりますので、受けてもらえるかどうかはわかりません。静岡県の市会議員さんが、コロナのみなし陽性の診断を受けたけど、PCRが陰性のため、コロナのみなし陽性を取り下げたという事例もあります。PCR陰性でコロナと診断することには医師にとっては、とても勇気がいると思います。コロナのみなし陽性の診断は厳格な基準で運用される必要があると思っています。