メンタル異常を従業員の方が自覚している場合に、管理者としてその従業員を働かせてもいいものかどうかはどういう観点で判断したらいいのか?これについて話していきたいと思います。そこには3つの原則(チェックポイント)があると思っています。その1つ目が、
メンタルヘルスの第一原則 業務遂行できているかで判断する
「就業規則を満たしているか」は意外に盲点になります。そもそも就業規則を記憶している人はほとんどいないからです。しかし、一般的な就業規則には「正当な理由なくたびたび離席してはならない」「上司の命令に従う」などの規定があることが多いのではないでしょうか?例えば、体調不良で頻繁に遅刻し、電話対応へのストレスでたびたび無断で離席しては帰ってこなくて、管理職が医療機関の受診を「命令」しても受診しない社員がいたとします。ここでの「無断離席」と「命令に従わずに受診しないこと」は多くの場合就業規則違反になります。では、こういう人にどう対応しているのか?というと「放置」「無視」されていることが多いかと思います。その理由は「メンタルが悪いならかわいそう」という周囲の想いがあるなかで管理職の者が自らが下した処分をやりすぎと周りに捉えられ批判されるかもしれないと怖れるからと推測されます。
メンタル不調なら不問で、メンタル不調でないなら処分するのかというとそういう問題でもないかと思います。そもそもメンタル不調である、ないの判断はグレーゾーンがあり、主治医にとっても難しいものです。メンタル不調であろうがなかろうが「業務を遂行できているか否か」で働かせるか休ませるかを判断するのがシンプルですっきりするのではと思います。
もうひとつ管理者として考えておかないといけないのは、業務が遂行できていない「原因」として、健康上の問題がありうるのか?という点です。顔色が悪い、肩で息をしている、意識がぼーとしているなど医師が健康の異常を疑う症状は山ほどありえますが、管理者は医師ではないし、病気を疑うことは難しいです。そのため、「普段と何か見た目に大きな変化があるのか?見た目疲れているのか?」で従業員の健康状態を推測することが必要になります。仮に管理職が従業員の健康上の問題を見落としたとしても、その従業員がそれを我慢していわずに業務を遂行できていたとすれば、安全義務違反には問われません。
参考文献:健康管理は社員自身にやらせなさい 高尾総司 著 保健文化社